帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)と同じウイルスによって起きる皮膚の病気です。 体の左右どちらかの神経に沿って、痛みを伴う赤い斑点と多数の水ぶくれが帯状に生じます。 症状の多くは上半身に現れますが、臀部、顔面、目の周りに現れることもあります。
通常、皮膚症状に先行して痛みがでることが多く、その後皮膚症状が現れるとピリピリと刺すような痛みとなり、夜も眠れないほど激しく痛む場合もあります。 皮膚症状の消失後にも約20%の確率で痛みが残り、「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれています。また、帯状疱疹が現れる部位によって、角膜炎、顔面神経麻痺、難聴などの合併症を引き起こすこともあり 注意が必要です。
帯状疱疹は、子供のときに感染した水ぼうそうのウイルスが原因で発症します。このウイルスは水ぼうそうが治った後も 体内の神経節に長期間潜伏しています。加齢とともに水ぼうそうウイルスに対する細胞性免疫が低下して、潜んでいたウイルスの再活性化が起こり 発症すると考えられています。 日本では現成人の90%以上が幼少期に水ぼうそうにかかっているため、ウイルスが再活性化し帯状疱疹になる可能性が高く、80歳までにおよそ3人に1人が発症すると言われています。特に加齢による細胞性免疫の低下にともない 50歳代から発症しやすくなります。
帯状疱疹にはワクチンがあり、現在日本では50歳以上であれば任意(自費)での接種が可能です。
帯状疱疹のワクチンは2種類あります。1)水痘用のワクチンと 2)帯状疱疹のワクチンです。
1)水痘用のワクチンは従来小児の水ぼうそう予防のために使用されていたもので、2016年から50歳以上の成人の帯状疱疹予防目的の使用が認可されています。弱毒化されたウイルスが含まれる生ワクチンです。
2)帯状疱疹のワクチン「シングリックス®」は帯状疱疹を予防するために独自に開発されたワクチンで、サブユニットワクチンという種類のものです。ウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組換えタンパクワクチンです。
2つのワクチンには 効果と費用に違いがあります。基本的に接種する方のご希望で選択できますが、水痘用のワクチンは生ワクチンのため、免疫に関わる薬剤を使用されている方は接種できません。 米国ではシングリックスが推奨されています。 また、日本では一部の自治体でシングリックスの接種に補助を出しています。(残念ながら牛久市近辺の市町村では2022年4月時点で補助はありません。)
2つのワクチンの違いについては以下の表をご参照ください。
帯状疱疹のワクチン比較
水痘用ワクチン |
帯状疱疹ワクチン (シングリックス®) |
|
---|---|---|
ワクチンの種類 |
生ワクチン | サブユニットワクチン |
接種回数 |
1回 |
2回 (2か月後に2回目を接種) |
予防効果 |
51.3% | 97.2% |
効果持続期間 |
およそ 5(~10)年 | 9年以上 |
副反応 |
接種部位の痛み、発赤、腫れ 倦怠感、発疹 (3日~1週間で消失) |
接種部位の痛み、発赤、腫れ 倦怠感、発熱、筋肉痛、頭痛 (3日~1週間で消失) 生ワクチンよりも副反応が強い |
料金(当院) |
7,700円(税込) | 22,000円(税込)×2回分 |
長所 |
接種が1回で済む 接種費用が安い |
免疫が低下している人も接種できる 予防効果が高く、持続期間が長い |
短所 |
免疫が低下している人、 免疫に関する薬剤を使用中の人は 接種できない 持続期間、予防効果がやや劣る |
痛みなどの副反応がやや強い 2回接種が必要 接種費用が高い |