炎症によって大腸の粘膜が傷つき、びらん(ただれ)や潰瘍を形成する病気です。症状は腹痛、頻回の下痢、血便、発熱などです。
腸管免疫機能の過剰な反応によって炎症が起こることは解ってきていますが、なぜそのような反応が引き起こされるのか 根本的な原因はいまだ不明です。 細菌やウィルスによる感染性大腸炎は治療で完治しますが、潰瘍性大腸炎は再燃することが多く、完治というよりも寛解という 無症状の状態を維持することが治療の目標になります。
若年者から高齢者まで発症の可能性がありますが、発症年齢の主なピークは、男性では20~24歳、女性では 25~29歳です。しかし最近では、40代以降に発症する人も多くなっていると言われます。
治療は 5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)の内服治療を軸として、症状や経過によって ステロイド、免疫調整剤(チオプリン製剤)を内服します。重症例では、入院して 強力な免疫抑制剤を使用することもあります。ステロイドで効果のない場合や、ステロイドを減量すると症状が再燃する場合は、分子標的薬が使用されます。
分子標的薬は 2010年に抗TNF-α抗体のレミケード®が使用開始され、その後新たな薬剤が開発されて 使用可能になっています。2025年10月現在は、抗TNF-α抗体、抗IL-23/12抗体、抗IL-23抗体、抗インテグリン剤、JAK阻害薬、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬といった薬剤の使用が保険診療で承認されています。
また白血球/顆粒球吸着療法という血液浄化療法、座薬や注腸製剤も治療の選択肢です。
内科的治療が奏効し 病状が安定した「軽症~中等症」の患者さんが全体の9割を占めます。定期的に通院していただき、病状の確認、内服治療を継続します。また、病状にあわせて血液検査や便検査、内視鏡検査を行います。
しかしながら内科的治療が無効な場合や、大量出血が持続する場合、癌が合併した場合は 手術で大腸全摘術が必要になります。 さらに、大腸全摘術後も回腸嚢炎が発生することがあり、継続して経過観察が必要になります。
1日に頻回の下痢が続いている場合、下痢に下血を伴う場合には潰瘍性大腸炎の可能性があります。診断、検査および治療には専門的な知識が必要な疾患です。当院院長は日本炎症性腸疾患学会のIBD連携専門医として診療しています。